イボ高論

卓男さんがブログ上に公開されているイボ高での極意書です。 転載自由ということで、こちらに取り上げさせていただきました。 以下に参照ブログのURLを載せさせていただきます。

卓男くんの趣味の部屋 http://takuo-hobby.seesaa.net/

 

はじめに

「イボ高論」と銘打って、今まで私がやってきた卓球についてまとめてみようと思ったのは、他大学のイボ高使いの後輩に「イボ高や異質反転型について書いてある本がなくて困っている。」という話を聞いたときからでした。 私自身も、中学1年生のときからイボ高を使い始め、先生や先輩から様々な指導を受けアドバイスをもらいましたが、もともと卓球についての解説書が少ない中で、イボ高主戦型に絞っての解説書は見たことがなかったように思います。

私が東医体*その他の大会で活躍できる機会に恵まれたせいで、各大学のイボ高選手が脚光を浴び、私の戦型を目指す人が出てきてくれたことは喜ばしいことだと思います。 いわば(東医体に限っていえば)今日の「イボ高ブーム」の火付け役の役目として、この拙文がイボ高主戦型を目指す人にとって何らかの役に立つことを期待しております。

ただ、これは私の主張するイボ高論であって、突き詰めれば100人のイボ高選手がいれば、100通りのイボ高の戦い方があっていいと思います。 「これが正しい。」ではなく、「こういう考えもあるんだ。」という立場で読んで、さらに自分なりの「イボ高道」を極めてもらえれば幸いです。

*東医体=東日本医科学生選手権大会の略語      毎年夏に4泊5日で開催され、500人近い人数で団体戦、個人戦、ダブルスを競い合う、かなり規模の大きな大会。

卓男は、おそらくイボ高主戦型では始めて、東医体の個人戦シングルスとダブルスで優勝した経験があります。 またインターハイには出場できませんでしたが、大学時代には北信越地区学生選手権で3位に入賞して、全日本学生選手権大会(全日学)に出場しました。 全日学では一回戦負けでしたが。

イボ高でも使いようによっては勝てると分かってもらえれば幸いです。

イボ高ラバーとは

 イボ高ラバー(粒高ラバーと呼ぶ人もいますが、本文中では呼称を「イボ高」に統一しました)とは、通常の表ソフトラバーよりイボが高く、細く、ゴムの質も柔らかく、イボが曲がりやすくなっているラバーです。 表ソフトが打球のスピード重視、裏ソフトが回転を重視して作られているのに対して、スピード、回転はいずれもそれらより大きく劣ります。

 一番の特長は、打球の際、イボが曲がって戻るときの作用によって、ボールの回転が逆(上回転なら下回転、左右の回転も逆)になってボールが返ることです。またボールの打球の角度、位置により、イボが倒れるか、打球面に対して垂直に押しつぶされるかの違いによって、逆回転がかかるかナックル(無回転)の打球になるかの違いがあり、ラリーに変化が与えられます。ナックルであっても微妙な回転がかかることが多く、フラフラ曲がる球が出たりします。

 また自分からは回転がかけにくいということは、ナックルの球が出しやすいということでもあります。これらの特徴のため、イボ高ラバーは、回転のかからないアンチラバーとともに「異質」ラバーと呼ばれています。

イボ高の種類

 イボ高の中でも、イボの高さ、太さ、スポンジの有無、厚さによって様々な種類があります。またメーカーによっても、その特色は微妙に異なるようです。

 私が使用しているTSPのカールを例にとって説明しましょう。 カールP1はイボの長さが最長で細く、イボ高の変化を最大限に出すようになっています。しかしながら、ボールのコントロールはその分難しく、両刃の剣と言えます。 私は中学2年生のときからこのカールP1を愛用しています。  カールP2は、イボは低く太く作ってあり、表ソフトに近いと言えます。あまり試合で使用している選手を見たことはありません。  カールP3は、P1とP2の長所をあわせたといううたい文句で、多くの選手が愛用しているイボ高です。イボの高さはP2と同じく低く、イボの細さをP1と同じく細くしたラバーで、イボ高の変化を高めつつ、コントロールがいいとの宣伝です。 ただ、私が使った感想では、コントロールの優位性より、イボ高の変化度の程度がP1よりかなり少ないのが気になって、すぐに辞めてしまった経験があります。カットマンの選手に多いのがこのラバーです。

 このイボの違いに、ラバーの有無、厚さによってまた種類が増えます。 私は一枚ラバー(スポンジなし)を使用していますが、これはドライブ、スマッシュを前陣のショートで止めるために、打球の勢いを殺す必要があるからです。 逆に一枚ラバーの欠点は自分から強打が出しにくいことで、フォアハンドをイボ高で振るには、薄目のスポンジがついていた方が打ちやすいです。

 ラバーの耐久性の面からいうと、一枚ラバーはラバーを粘着シートでラケットに貼るために、(ペンホルダーのラケットの場合)裏ソフトでの打球の際に中指がラバー面に触れ、サーブやドライブ、ツッツキなどで回転をかけるときに中指に力が掛かり、ラバー面を擦って、しばらく使うと粘着シートとラバーがはがれて、使えなくなるという欠点があります。 そして一回はがれた粘着シートは2度とつけられません。

 もっともイボ高はイボが柔らかい分寿命も短く、激しい練習を毎日繰り返した場合、私は2週間でイボがもげた経験があります。実はもげかけのイボの方が、変化が大きく有利なのですが、公式の試合では、イボを倒してみて根っこの方が切れかけているラバーは使わない方が無難でしょう。大きな試合の前はラバーのコンディションにも気を使って、大会の日程にあわせてラバーを馴らしていくことも大切です。また万一に備えて替えのラバーをもっていった方が安心です。

 カール以外で私が使ったことのあるイボ高は、バタフライのフェイントと、ヤサカのファントムがあります。フェイントは一枚ラバー(フェイントOX)では、イボの種類が1種類で、スポンジ付ではフェイントソフト、フェイントロングの2種類があります。フェイントOX、フェイントソフトのイボの高さはカールP3並み、フェイントロングのイボはカールP1並みだと思われます。ファントムは、007、008、009と3種類があり、一枚ラバーの009を使ったことがありますが、日本で最初に発売されたイボ高というだけあって、ゴムの質が硬く、イボ高の変化は大したことなかったように感じました。

 バタフライの表ソフトにマグニチュードというのがあって、これはイボを横から見ると上の辺が短い等脚台形をしていて、(表ソフトとしては)イボが曲がりやすくイボ高効果が出る表ソフトという宣伝文句ですが、私が使ってみたところ、本物のイボ高よりはその効果はとても小さく、普通の表ソフトという印象でした。後述するイボ高主戦型に使うラバーとしては適さないと思われます。

ラケット

 私はペンホルダーの反転ラケット(以下「反転」)を使用していますが、中国式ペンホルダーラケット(以下「中ペン」)で両面にラバーを貼って使ったこともあります。 両者の一番の違いは、グリップの形にあります。反転は親指と人差し指の間の「水掻き」の当たる部分に切りかきがあり、グリップエンドが出っ張っているために手が引っかかりやすく、回しやすいように出来ています。 中ペンはそれに対して棒状のグリップなので(多少削ることは出来ますが)反転する際に落としやすいと思います。中ペンも練習次第で自由に反転できると思いますが。

 反転のラケットで、最近は角丸形(ラウンド型)ばかりですが、昔は角形(スクエア型)の2種類がありました。

普通のペンホルダーについても言えることですが、角形は、ラケットの先の部分まで幅が広いので、ドライブ型の選手用で(先の方で打球した方が回転がかかるから)、角丸形は、ラケットの中部を使うオールラウンド型の選手用と言われていました。 イボ高主戦型としては、プッシュの際に真ん中を広く使える角丸形か、中ペンをお勧めしたいと思います。

 反転の方法は、面白いことに2方向あります。 私は上から見て、時計方向に回しています。親指と人差し指でグリップを挟んで持って、中指と薬指をラケット面にかけて回します。 この方法だと、親指と人差し指でグリップを挟んだまま、連続してラケットを回せます。 サーブを出す際に直前までラケットを回して、相手を混乱させることが出来ます。 今どちらの面が向いているかは、裏にあてた中指の腹の感触で知ることが出来ます。 同じフォームから、裏ソフトとイボ高で2種類のサーブが出せるのです。 ただこの回し方の欠点は、ラケットを下に(グリップを上に)向けないと反転できないことです。

 これに対して、反時計回りの回し方は、私はうまくできないのですが、人さし指ではじいて回すやり方だったように思います。

 いずれの回し方にしても、左手を使わずに、スピーディに、かつ落とさないように確実に回せるようになるまで練習することが大切です。 私も試合中に反転不良で変なグリップの持ち方のまま打ってしまうことがたまにあります。 特に、夏場は手に汗をかいて、冬場は手がかじかんで反転がうまくできないことがあるので注意が必要です。

 グリップの話を少ししますと、初心者の方の中には、ラケットの裏に添える指(中指、薬指、小指)を伸ばして、指を開いて3本ともラケットの裏につける人をよく見ます。 これはショートのときに手首が使いにくく、ラケット面の角度の調整(特にかぶせるとき)が困難になるので、軽く指を曲げて、中指のみをラケットにつけ、薬指、小指は中指の上に軽く添えた方がいいでしょう。 ショートでラケットをかぶせる(下を向ける)ときは人差し指に力を入れ、親指は浮かせてしまってかまいません。反対のフォアハンドでラケットをかぶせるときは、親指に力を入れ、人差し指は浮き気味になります。

 シェークハンドグリップのイボ高については、カットマンでもプッシュ等を使えばバリエーションが拡がると思いますが、シェークハンドの弱点(フォアとバックの間、腋の前が打ちにくい)を突かれると、厳しいと思います。 プッシュはペンでは手首を固定し、前腕を突き出して押すのですが、シェークでは手首のスナップをきかせることになります。

 イボ高を貼らない方の面は、サービスの回転のことを考えると裏ソフトラバーがよいでしょう。 私は粘着性のよく回転のかかるラバー(タキネスドライブやTSP730)を使っていますが、好みで高弾性のスレイバーやマーク」を使うのもよいでしょう。

 ただ、イボ高を貼っているため(一枚ラバーはかなり軽いのですが)重量がかさむため、重いラバー(アバロックスピュロットなど)は避けた方が無難だと思います。 反転式のラケットは、もともと極めて軽く作ってありますが、私が使ってみた経験では、ラバーが重すぎてラケットのバランスが悪かったように思いました。 私のラケットは、カーボンで軽すぎるため、プッシュに威力を持たせるためにパワーテープ(鉛の重り入りのサイドテープ)を貼ってあります。

イボ高主戦型とは

 一般に卓球の本ではプレースタイルでおおまかに「前陣速攻型」、「ドライブ主戦型」、「カットマン」、「オールラウンド」に分類してあるのが普通です。  この分類によると、イボ高を使う選手はカットマンを除き、「異質反転型」に含まれるのが多いです。  しかしこの「異質反転型」という型の呼び名は、他の「ドライブ主戦型」等のプレースタイルからついた名称でなく、使用する道具(ラケット、ラバー)からついた名称で、プレースタイルを現していると思われないので、ここで私は自分の戦型を「イボ高主戦型」と定義したいと思います。

 私の提唱する「イボ高主戦型」とは、「ペンホルダーまたはシェイクハンドグリップの片面にイボ高を貼って、主にイボ高のショートによるラリーでポイントを得る型」ということになります。以下、ペンホルダーの反転または中ペンで、片面にイボ高、片面に裏ソフトラバーを貼った戦型を例に話を進めていきます。

イボ高の試合展開

 定義だけでは曖昧なので、以下「イボ高主戦型」の試合展開についてまとめてみたいと思います。

 イボ高の特長(回転を逆にする、回転に影響されにくい、弾みにくいこと)を活かして、欠点(スピードが出ない、コントロールが難しい、回転が自分からかけにくいこと)をできるだけ表に出さないすることを考えなければなりません。

 言葉の話をすると、戦略とは勝負全体の勝敗を決めるための基本的な構想とそれを実現するために技術。戦術とは1本1本のラリーで勝敗を決するための、いわば応用の技術。「状況を作るのが戦略で、状況を利用するのが戦術である。」ということです。

 対戦相手が攻撃型の選手に対する戦略は、「相手に攻撃させない」ことに尽きます。そして相手がつないできたら、ひたすら「相手のミスを誘う」戦術に持ち込むのです。

 簡単にいうと、相手の攻撃の手段をなくし、相手の得意な卓球をさせないのです。 具体的には、ドライブ選手に対しては、強烈なドライブを打たれないように、台上で2バウンドするような短い球でラリーするのです。  前陣速攻選手に対しては、スマッシュが打てないような、ネットより低い球をひたすら出すのです。

 もちろん、すべてのラリーがそういう風に展開するわけにいきませんから、相手に攻撃される場面も出てくるでしょうが、そういうチャンスを減らすために、コースを使い分けて、相手を撹乱するのです。

 イボ高の特性を使って、攻撃させずに揺さぶるのに効果的なのは、ストップを使って前後に揺さぶることです。それで相手がバランスを崩し、チャンスボールが上がったら、こちらから攻撃するのです。

 また攻撃されたときも、台上でイボ高で返球しなければなりません。これらのテクニックが戦術といえます。

 何についても言えることですが、戦略レベルでの優位は戦術レベルでの勝利を得やすくします。逆に戦略レベルで相手のペースに引き込まれると、戦術レベルでの挽回は難しくなります。  カットマンが苦し紛れにスマッシュを打って決まっても、なかなかそれで連続得点して勝のが難しいというのも、戦術レベルでポイントしても戦略レベルで何も変わってないためです。だから「自分の卓球」の基本方針をしっかり確立して、「自分の卓球」に持ち込むことが勝利への近道といえます。

 そして、相手に自分の卓球をさせない=攻撃させないことで、相手を精神的に揺さぶり、このままでは勝てないと、あきらめさせるのも大事な戦略です。  イボ高の球を打つには、普段と違う感覚が必要で、精神的に取り乱した(キレた)相手がむちゃくちゃに打ってきても、そう簡単に入るものではありません。私はそうやって、自滅していった相手をたくさん見てきました。これはレベルの高さに関係なく(性格の問題)、相当強いといわれる人でもあることです。  また、この戦法ではダメだと相手が悩むことによって、悩んでくれたら儲けものです。それにつけ込んで点差を引き離すチャンスです。

 恐い相手は、一旦こちらのペースにはまっても、開き直って(考え、作戦を思い切って変えて)プレーできる選手です。こういう選手は一流選手といえるでしょう。  よっぽど実力差がない限り、1ゲーム中に相手がはまるチャンスは1度はあるものです。こういうチャンスに、相手をはめて、そこから抜け出させないこと、これが基本方針です。

 ここまで読んで、イボ高の戦い方は卑怯だと思った人は、イボ高をやめるか、違うイボ高の戦い方を追求してください。  私にとってイボ高での戦い方は、卓球というスポーツのルールに則って、相手より多く得点するためにはどんな手段もいとわないという考え方の上にあります。  もちろんヤジをとばしたりとか、その他バッドマナーは大嫌いですが、ルールの上で、自分の苦手なスタイルを卑怯と決めつける方が汚いと思います。

 私も昔、心ない選手から「卑怯だ」とか「絶対に(高校、大学と)先にいって、イボ高は通用しなくなる」とか言われたものですが、イボ高主戦型も卓球の一戦型として確立しており、通用するかしないかは戦型のせいでなく、自分の実力次第だと考えております。(それでも、勝てないのを実力でなく、戦型のせいにしたくなるときもありますが...)

 余談ですが、昔高校野球で現大リーグヤンキースの松井選手が4打席連続敬遠されたことがありました。  それに対して「正々堂々と勝負しろ」「高校生らしくない」との批判もありましたが、私は勝つためには正しい選択だったと思っています。  そして勝敗がすべてとは思いませんが、勝つことを目的として(遊びでなく真剣に)プレーする上では、イボ高も敬遠も、ちゃんとした戦略のひとつだと思っています。

イボ高のサービス

 前述ののイボ高主戦型のラリーに持ち込むためには、自分のサーブは基本的には、短いものでなくてはなりません。相手のレシーブから攻撃されては、「攻撃させない」という大原則に反するからです。

 主に私は、裏ソフトでの短い下回転サーブを多用します。台上で2バウンドするような、ドライブや「はらい」が出来ないようなサーブです。  台上のドライブで持ち上げてくる選手もいますが、台上ドライブくらいの威力では、十分にイボ高ショートで短く返せます。返せないような強烈な台上ドライブが出来る選手はそういませんが、もしいたら、こちらの基本戦略を変える必要に迫られるでしょう。

 短い下回転サーブに交えて、イボ高独特の短いナックルサーブを混ぜるとなお効果的です。  これは、下回転サーブ(フォアからでもバックからでも)と同じフォームでただラバーをイボ高面で出すのです。  フォームが下回転と同じなので、ラバーの色を良く見ていないと、相手は下回転と勘違いしてつっついてきて、レシーブが浮いて返ってくることがあります。  こういうミスを多発する選手、ナックルが分からない選手に対しては、3球目を裏面で待っていてスマッシュすると良いでしょう。

 このサーブも高さ、コースによっては打たれにくく、効果的ですが、うまい相手だと、フォア前に出したサーブをフォア前に鋭い角度で返してきたり、バック前だとプッシュまたはバックハンドで強打されることがあります。  下回転サーブよりは相手の2球目攻撃に対して注意が必要です。  しかしきちんと低く短く出すと、打たれてもクロスに打たれる場合が多いので(クロスだとネットに当たるまでに斜めだから距離があり、そのあいだに時間を稼げるため)、ある程度コースが読め、飛びついて取ることが出来ます。

 短いサーブだけでは慣れられて、相手があらかじめ前で踏み込んで構えることになるので、たまに長いサーブを混ぜることも重要です。  短いサーブを警戒させておいて、バッククロスに長くて速い下回転サーブを出すのが効果的です。  相手が突っついて長い下回転で返してきたら、後述の「プッシュ攻撃」に移ることが出来ます。

 また、イボ高面でロングサーブを混ぜるのも効果的です。  狙いが相手に分かられるとスマッシュで返される危険があるので多用は出来ませんが、9-9の場面などで、相手も緊張している場合などで、奇襲戦法として使ってみるのも良いでしょう。  特にフォア側に速いロングサーブを出すと、相手が回り込もうとしている場合には飛びつけないことがあります。

 いずれにせよ、基本戦略を守るため、打たれないサーブを出し、3球目以降も、短い球でつなぐのが基本です。  それが単調にならないように、バリエーションをつけていくのです。割合は、状況にもよりますが、サーブ3本中短いのを1~2本、長いのが1本でしょう。    そして、ゲームの前半(1セット目)に相手の苦手なサーブを見つけておいて、接戦で移行していったら最後までそのサーブを温存しておくと、相手に対して心理的に優位に立つことができ、最後にそのサーブで一気にスパートをかけて離すことが出来ます。

イボ高のレシーブ

 イボ高は、相手の回転の影響を受けにくいので、ある程度相手の回転が分からなくても適当な角度を出せばレシーブを返すことが出来ます。  しかし、それだけでは肝心なときにミスをしたり、相手にチャンスボールを与えてしまうことになりかねません。  やはりここは基本に忠実に、短く、低く、相手に打たれないレシーブをすることを考えるべきです。

 まず、短い下回転サーブに対してですが、ショートの軸足(私の場合は左足)を前に踏み込んで、体をボール近づけて、イボ高で軽くつっつくようにしてレシーブします。  普通のツッツキよりも面を立ててつっつくと、ボールが浮き上がらずにレシーブすることが出来ます。

 これもネット際に、フォア、バックを使い分けて、相手に台上からの攻撃(特にシェークハンドのバック)をされないように揺さぶりましょう。

 長い下回転サーブに対しては、前に踏み込まないで、短い下回転と同じように返す方法と、プッシュで攻撃に結びつける方法があります。プッシュについてはあとで述べます。

 私がもっともレシーブで苦手とするものに、ナックルロングサービスがあります。 これは、角度を調整して、ストップで球威を殺し、なおかつイボ高で下に切るようにうまく返せれば、すごくいいレシーブが返るのですが、球威を殺しきれないとすぐオーバーミスをしたり、高く返って相手にチャンスボールを与えたりしてしまいます。

 ナックルロングに対する注意点としては、ボールにすばやく反応し、足を踏み出して重心を移動し、決して手を伸ばしただけでレシーブしないようにします(特にフォア側の場合)。

 次にストップですが、打球の瞬間、ラケットをわずかに後ろに引くのです。  こうすることで球威を殺します。  ラケットを引いて、ボールとの相対速度を小さくし、ラバーとボールの接触時間を長くとることによって、イボをやんわりと曲げ、イボ高効果を高くすることが出来ます。  これで球威を殺しきれない場合、ラケット面をやや下にかぶせ、打球の瞬間ラケットを真下に下げると(ストップを加えるため実際には下、手前方向)、ドライブがかかった打球でも、下回転をかけて、カットマンのように低く返球することが出来ます。  打球点は、自コートでバウンドした直後です。  タイミング的には、トトンという感覚です。  この感覚は練習で培うしかないでしょう。

 これでもまだオーバーミスしてしまうような速い打球に対しては、横に力を逃がす方法があります。  今までのことプラス、ラケットを斜めに出して、力を横に逃がすのです。

 さらにストレートの球に対しては、クロスに逃がすと、飛距離が長くなってもオーバーミスしにくく、打球が低くてもネットにかかるまで距離がとれるため高さが稼げるという利点があります。

 特に対イボ高に慣れた人では、この手のロングサーブを多用して、3球目攻撃にかけてくるパターンがあるので、ナックルロングに対する練習が必要です。

 その他の上回転、横回転サーブに関しては、普通のラバーより返しやすいので特に問題はないでしょう。  ただ、これも漫然とレシーブするのではなく、横回転ならさらに順方向の横回転を加えて返してやるとか、逆方向の横回転で打ち消してやるとか、変化をつけて返すと相手に予想を立てにくくし、揺さぶることが出来ます。  相手のサーブを出す瞬間、ボールの描く奇跡をよく見て、その回転にあった対処をすることが大事です。

イボ高の攻撃

 イボ高主戦型は、主に相手に攻撃をさせずに、ミスを誘うプレーですが、それだけでゲームを続けると、相手に慣れられて、こちらからの攻撃がないと大胆に回り込んで攻撃されたりしてしまいます。  そのためにも、足止めを食らわす意味として攻撃も必要です。

 一番効果的な攻撃は、ショートのまま、イボ高でプッシュをする方法です。  これは、相手に攻撃のタイミングを察知されにくく、初対面の相手は戸惑います。  基本的に下回転の球に対してしか出せません。  (下回転が上回転になって返球するため)    まず向かってくる球に対して、体をまっすぐ相対させることが大事です。  斜めを向いていたり、体の前でなく手を横に張り出してプッシュしたりしたら、プッシュは入りにくく、入っても威力は半減します。  ラケットの面の向きは、下回転のかかりにもよりますが、垂直よりやや上向きで、ボールの頂点やや手前を捉えて、腋をしめて、手首を固定して、前腕をまっすぐ前に突き出すように押し出します。  腕が伸びきる直前がもっともスピードが出るので、ボールの頂点がそこにくるようにボールを引きつけて押し込みます。  打った瞬間、さらに人差し指(ラケットの下側)に力を入れ、ボールをかぶせます。

 このとき足のスタンスは、肩幅に広げて、やや右足後ろ、左足前にしておき、プッシュと同時に重心を後ろから前に移してボールに体重をかけると、ボールに威力を与えることが出来ます。  台の手前2/3くらいでバウンドしてきた、比較的長くて、あまり高すぎないツッツキ球がチャンスボールなのですが、もう少し短い球に対しても、足を踏み込んで打つことが出来ます。

 相手が台にぴったりとついて前陣にいる場合には、深いところ(特にバック側)を狙うと、相手がつんのめってしまい、対応できない状況に持ち込めます。  浅いところを狙ってプッシュすると、バウンドして浮いてしまって、スマッシュを打たれる危険があります。

 プッシュで打った球は下回転を返したので基本的に上回転となります。  たまにイボの当たり具合によってナックルになります。  上回転の球なので、相手がショートしたりすると、浮き球となって返ってくることがあります。  そこを反転して裏ソフトで待ちかまえていて、スマッシュで決めるのが実戦でよく使える攻撃パターンのひとつです。   このとき、浮き球をまたイボ高でプッシュしようとしてはいけません。  返ってくる球は下回転でなく、さっきのは違うようにプッシュを出さねばならず、ミスが非常に多くなります。

 プッシュは、イボ高に特徴的で、意外性もあり、相手が取りにくく、練習すれば命中率も高く、何よりショートの形からそのまま攻撃に移行できるメリットがあります。  しかし、なにぶんショートからの攻撃なので、フォア側のツッツキに対しては、移動してボールの正面に入ってからの攻撃はかなりのフットワークを要すると言えます。

 イボ高でフォアが振れれば一番よいのですが、これはかなり難しく、私の課題となっています。  イボ高によるフォア打ちで一番よいのは、角度打ちの要領で、ラケットをやや上向きにして、ボールをのっけたあと親指でラケットをかぶせて持っていくやり方です。  打球点の取り方が難しいのですが、私は、ダブルスのレシーブで下回転の短いサーブに対してなど、ごく限定した条件で使っています。

 台上で待っているため、急に長いサーブで来られるとのけぞってしまい対応できなくなるのが難点です。  長いボールに対してだと、イボ高だとボールが弾まないのでどうしても強めに打ってしまい、その結果イボ高らしさがなくなって、しかも普通のスマッシュよりはるかに遅いですから、打ち返されてしまうことがあります。    そこで、フォアで手首を右下にかえして、ボールを外側に逃がして打つ方法があります。(流し打ち)  威力はないですが、攻撃してくると思わせておいて、相手のタイミングを狂わせることが出来ます。

 イボ高選手は、私も含めて、一般にフォアハンドロングがへたくそです。  とんでもなく独特のフォームでフォアを打っていて、遠くから見てもイボ高選手だと分かることがあります。

 この理由はいくつか考えられますが、大きな理由は、 1)ショート主戦のために、常に手関節が前腕に対して90°曲がった状態が続いている。 2)そのままフォアに切り換えようとすると、前腕を180°外転させ、手首が曲がったままフォアの構えにはいる。 3)手首が曲がって固定したまま打とうとすると、肘関節の可動域が狭くなり、その結果肩関節を使って、腋が開くフォームになってしまう。

 という理由だと考えられます。  このフォームだと、高い球を上から打ち下ろすことが難しく、ロビング打ちがへたな原因となります。

 フォア側の攻撃を止める際に親指に力を入れてラケットをかぶせる場合は別ですが、普通にフォアを打つ際には、ふだんの練習からラケット、手首、前腕が一直線になるように手首を固定するよう心がけることが大事です。

イボ高の防御

 何度も繰り返すように、イボ高の基本は相手に打たせないことです。  しかし、甘い球がいってしまって、または相手がこちらの予想を越えてすごい台上ドライブを繰り出してきたような場合には、なんとかこれを返球しなくてはなりません。

 さいわいイボ高は弾みが少なく、回転を減ずることが出来るため、ブロックに向いたラバーです。  以下、攻められた際の対処について述べます。

 理想的なドライブの返球は、ロングサーブに対するレシーブで述べたように、真っ正面に構えて、ストップをしつつ下回転をかけることです。  一概にドライブに対するといっても、つなぎのドライブも、決め球のスピードドライブもあります。  基本的には、速いドライブほど打球点を早くすることです。  つなぎのドライブに対しては、浮いてチャンスボールを与えないことはもちろんですが、単調にならないようにコースを使い分けて返すことが重要です。  あまりに甘いつなぎドライブなら、裏に反転してプッシュをするなり、スマッシュを打つのも相手になめられないためには効果的な戦術です。

 スマッシュに対しては、 まず何においても、ボールに素早く反応しなくてはなりません。  足を踏み出せたら一番いいのですが、間に合わなかったら、とにかく手を出してラケットに当てることです。  ラケットに当てなくては、何も始まりません。

 そのとき(ドライブも同じですが)決して台から離れて下がってはいけません。  その球が返球できたとしても、その次の行動が著しく制約されてしまいます。  スマッシュの返球ですが、これはドライブより打球の瞬間が短いので、下に切ることは困難です。  打球点を早くして、横に力を逃がすことを中心に考えましょう。  あとはひたすらタイミングと慣れなので、3球目攻撃の練習の際などに、相手にワンコースに決めてもらい、スマッシュを拾う練習をしましょう。

 速いスマッシュを返して相手が反応できずに得点することは、初めはそれこそ奇跡のように難しいと思います。  でももし試合でそれで決まったら、自分でも驚かないで、当たり前だというように平然としていてください。  それがだんだん出来るようになっていくのです。

 相手は、偶然でなくスマッシュは返されるんだと思い込み、なおさら速く打とうとか、コースを厳しくしようとか考え、ミスが多くなればこっちのものです。  こういう、実力以上の演出も、勝負の駆け引きでは大切なのです。

 通常のラリーで、ストップボールを出すには、打球点を出来るだけ早くした方が、相手の意表を突くことができ、効果的です。これもドライブ、スマッシュ、ロングサービスに対するストップと同じく、打球の瞬間、こころもちラケットを引きます。  ネット際に、ポトリという感じで落とします。  どうしてもボールの飛距離が長くなってしまいそうなときは、斜めのコースをうまく使って、できるだけネット際に落とすようにします。

イボ高の練習法

 イボ高は特殊なラバーで、練習しにくい型です。  初心者や、格下の相手と練習するときには、裏ソフトで相手をする方が、お互いの練習になります。

 初心者相手でイボ高を使うと、フォームが固まっていないうちからイボ高に対する打ち方になってしまい、変な癖がついてしまうおそれがあります。

 イボ高選手が初心者の場合も、基本は裏ソフトでしっかりつけておいた方が、自分のためにもなり、また、将来いろいろな型に対する指導にまわる立場になったときもよいと思います。 (私が基本のフォアが打てずに苦労しました。)   フォアハンドは前述の通り、イボ高選手の下手な技術のひとつです。  上がったチャンスボールを、確実に反転してたたけるように、裏ソフトでのフォアハンドは重要です。

 裏ソフトのショートも、プッシュのあとの浮き球や、緩いつなぎドライブを回り込まずに攻撃するには大切です。

 また速いラリーに眼を慣れさせることも、スマッシュやドライブを拾う動体視力を養う上で大切です。  フットワークも、イボ高を使うとラリーが遅くなり、足運びが楽になりますが、負荷をかけて練習するという意味では、裏ソフトで練習した方が効果があるでしょう。

 また、フォアとショートを混ぜるフットワークで、ショートだけをイボ高に反転して打つのは、すばやい反転を鍛え、イボ高の球に対する返球をフォアで打つ練習にもなり、役に立つと思います。  私もよくこの練習をしました。

 ツッツキ打ち、3球目攻撃では、自分の番のときは、下回転からのイボ高プッシュの練習をします。  コースを決めておくと、相手も慣れてくるとプッシュを返球でき、そこからの攻撃パターンの練習ができます。

 相手の攻撃練習の順番では、相手のレベルにあわせて、イボ高と裏ソフトを使い分けます。  相手がイボ高打ちの練習をしたいというのなら別ですが、裏ソフトで返球して、スマッシュなり、ドライブなりを打ってもらって、それをイボ高で返す練習をするのがよいでしょう。

 イボ高打ちがうまい人との練習では、レシーブやラリーからイボ高を使い、どのように返せば打たれにくいかを研究するチャンスになります。  またワンコース(バッククロス)でドライブを打ってもらい、それをひたすらイボ高で止める練習をします。何球も連続で返球できるように練習しますが、東医体レベルでは、2球攻撃のドライブをしのげれば、得点できる場合が多かったです。

 自由練習などの時間があれば、フォア前の下回転をイボ高ではらう練習などをするのもよいでしょう。  いつもイボ高打ちがうまい人と練習できるのが理想ですが、自由練習などでは積極的にイボ高を使い、イボ高打ちがうまい人を自分で育てるのも、結果的に自分のためにもなります。

タイプ別対策

1)対ドライブマン  基本に忠実に、まずドライブを打たせないことです。  シェークハンドのドライブマンはバック面でもドライブを打ってくることが多いので、バック側といっても甘い球は厳禁です。  でも基本的には、バック対バックのクロスのラインを中心としたラリーを心がけます。

 チャンスを見計らって、シェークハンドの欠点、フォアとバックの切り替え(わきの下)の深いところを狙ってプッシュで攻めます。  つなぎのドライブと決定打のドライブを使い分けてくるドライブマンはなかなか攻略しにくいのですが、つなぎのドライブを変化をつけて(ときには裏ソフトで押したりして攻撃し)返し、決定打を打たれないようにします。

 できることなら、台上で短く止めて、つなぎのドライブも打てないようにし、困って突っついてきたところをプッシュで攻撃して撹乱すると効果的です。単調にならないように注意しましょう。

2)対前陣速攻  これもとにかく、チャンスボールを与えないことです。  逆に、相手がスマッシュを決められなければ、これほど戦いやすい戦型もありません。

 相手が短気で、入らないのに打ち続けてくれて、キレてくれるといとも簡単に勝つことができます。  そういう状況(嫌なイボ高)に持っていくために、短い球で左右、前後に揺さぶりましょう。  相手が待っているのと逆のコースを突くことができれば、そんなに厳しい球でなくても、スマッシュの成功率を下げさせることができます。

 特に、表ソフトを使う選手がよく出してくるナックルロングサービスは要注意です。  しっかり低く返せるようにしましょう。

 たまに強烈なスマッシュを決められることもありますが、要は相手を調子に乗せないことです。  相手のペースにはまったと思ったら、サーブ交代の際にタオルで汗を拭いて間合いを取るとか、今までと違ったサーブを出してみるとか、思い切って揺さぶってみるとか、状況を変える工夫をしましょう。

3)対カットマン

 一番いいのは、台上からボールを出さず(2バウンド性の球を出す)、相手に振りかぶって切れたカットをさせずに、ただの台上ツッツキマンにしてしまうことです。  強い打球を打ち慣れているカットマンほど、すぐに下がって台から離れようとするので、台上のツッツキ合いになると弱いことがあります。

 また、相手の下回転でこっちがミスが多いようなら、バック面を狙って、相手のイボ高の打球のみ処理するようにします。  また、相手のイボ高の球がイヤなら、フォア側のみに球を集めて、裏ソフトでのツッツキの処理に徹します。

 カットマンは、フォア側を裏ソフト、バック側をイボ高と決めている型が多く、反転してくる人は少ないので、自分の好きな方を相手にして戦いましょう。

 一般にカットマンは攻撃力がたいしてない場合が多いので、攻撃型の選手と対戦するよりはコースが多少甘くなってもいいですから、ミスを絶対にしないようにします。  大体ラリーが長く続く試合(つっつき合い)になりますが、こちらのミスをなくし、かつコースで揺さぶったり、ときにツッツキに対してプッシュを混ぜられれば主導権を握った試合ができます。

 ただカットマンのツッツキは、普通の人より切れている場合が多いので、プッシュにも注意が必要です。  また、上手なカットマンでは、同じように見えて切れたカットと切れていないカットを使い分ける選手もいるので、自信がなかったらイボ高で、切れていても切れていなくても返るように、少し横回転を混ぜて安定させた球で返すようにしましょう。

 カットマンのバックのイボ高面は、イボ高主戦型と同じ弱点を持っているので、バッククロスへのロングサービスが有効な場合があります。  試合の前半に使ってみて、効くようなら最後に取っておきましょう。 (負けている場合には別です。どんどん使っていきましょう。)  ラリーも長く、我慢比べになることが多いのですが、精神戦で負けないようにしましょう。

4)対イボ高主戦型  これは、自分がされたらいやなことを、相手より先にやります。  具体的には、  1.バックバックのラリーから、いきなりフォアに長い球を出す。  2.ナックルロングサービス(フォアストレート、バッククロス)を執拗に出す。  3.短いラリーから、長い球をバック側に出し、台にくっついているとこをつんのめさせる。  これも、対カットマン戦と同じように、長いラリーになることが多いですが、こっちからキレないようにしましょう。  こういう状況だと、ナックルボールをイボ高でプッシュしなくてはならない状況もでてきますが、力まないで、深いところに送り出すようにした方が、イボ高にとってはイヤなものです。  力むとこちらのミスが多くなってしまいます。

 ある程度うまいイボ高主戦型で、イボ高のまま、あるいは反転して裏ソフトでフォアを振ってくる選手もいますが、やはり攻撃型選手よりその威力、命中率は劣りますので、左右に揺さぶって、無理な体勢から攻撃させてミスを誘うのも方法です。  自分は決して無理なプレーをせず、相手に無理(難しい)プレーをさせるように持ち込むことが鉄則です。

イボ高の欠点

 今までの中でも述べてきましたが、イボ高の欠点としては、 1)フォアが振りにくく、安定しない。 2)急に来た深い球に対応できずにつんのめると、失速してネットまで返球が届かない。 3)ロングサーブに対して浮いてしまいやすい。 4)じっくり相手に攻められると、単調になり、慣れられてしまう、などがあります。これらのことを踏まえて、練習しましょう。

 裏面に反転して攻撃する際には、球を見て、打てそうだったら反転するのでは間に合いません。 (高いロビングを上げられたなど、そういう状況もありますが)

 そこで、プッシュのところにも上げたように、自分からチャンスボールが来るような準備球をその前に出しておいて、上がったところを狙い打つようにしましょう。  どのタイミングで反転したらいいかというのは、大変微妙なものです。練習のときから、意識して練習しましょう。

・他戦型選手から見たイボ高攻略法

 イボ高の弱点を突いた攻め型(攻められ型)をいくつか紹介しましょう。これらは、私が実際にやられて、苦しんだ例です。

 1)ツッツキをしないこと。  ツッツキをすれば、強烈で取りにくいイボ高プッシュが来るのが分かっているので、決してツッツキをしないタイプの選手です。  フォア前とかで普通ならつっつく状況になっても、ぽーんと軽く持ち上げて、下回転を入れずに返すのです。  それに対するこちらの返球は、ナックルが多いので(下回転でないので)、無理につっつかなくても返せるのです。

 もちろん、サーブも下回転は極力出さないようにします。  バック(ショート)側では、ペンの選手でも、ドライブのように持ち上げて(ショートの構えでドライブ球を出す)、つっつかずに返してくる選手がいて、苦戦しました。

 イボ高側としては、そういう球に対して裏ソフトで待ちかまえて、裏でプッシュできれば一番よいのですが。

 2)イボ高同士の押し合いで、先手を取られると、苦しい展開になります。  深いところに押し込まれた(プッシュされた)イボ高の球は、イボ高では大変取りにくいのです。(真下に落ちます)  そうならないためにも、イボ高同士の試合では、こちらから揺さぶって先に攻められないようにし、無理をしないようにしつつ先に攻めましょう。

 3)激切れのカットマン。あまりにも下回転が切れていると、プッシュできないことがあります。  イボ高で突っついて返すのですが、単調になりやすく、こちらのミスも多くなります。  カットマンは前後左右の揺さぶりにも慣れているので、やりにくいことがあります。

 4)台上ドライブを打てる選手。  私の周りではあまり多くはいませんが、台上から強烈なドライブを打てる選手がいます。  イボ高で台上で短く止めても、打ってこれるのです。  こういう場合には、逆に長い球を混ぜないといけません。  短い球だけだと、慣れられて、完全に球があってしまうからです。  また、相手のドライブを2球以上続けて返せるよう反応し、確実にストップすることが大事です。

 5)イボ高打ちに慣れた選手。  イボ高打ちに慣れた人は、ツッツキとドライブを交互に出してきます。  ツッツキに対してイボ高で上回転になったところを、ドライブで返し、ドライブがイボで下回転になったのを、ツッツキで返すのです。  で、ラリーを続け、甘い球が来たら決定打(速いドライブまたはスマッシュ)で決めるのです。  これは非常に有効なイボ高攻略法ですが、こちらが単調にならないように、たとえばつなぎドライブを裏ソフトで押して返したりすれば、相手の計算を崩すことができます。

 相手が突っついてきたのを、イボ高プッシュで打つと、フォアで待ちかまえられていて、打ち返される場合があります。  プッシュは、上回転性の球で、スピードもスマッシュよりは遅いので、コースと来るタイミングを読まれれば、打ち返されやすいのです。  もちろんプッシュも混ぜた方がいいのですが、コースに注意が必要です。

イボ高は楽か?

 イボ高は、相手にとって慣れるまでイヤなプレーなので、自分が慣れて相手に慣れられるまでは、簡単に勝つことができます。  初心者から始めても、イヤなプレーを割と短期間で修得できます。  ドライブマンのように後ろに下がって引き合ったり、バック側に豪快に回り込んだりもしないので、体力的にも楽そうに見えます。

 ただ、ある程度イヤがられるプレーから、一流選手にも通用するようなイボ高の球を出すには、大きな壁があると思います。

 私自身、何度もイボ高のプレーに限界を感じ、壁に突き当たりました。  大学の先輩に、イボ高の相手をするのが大の得意な人がたくさんいて、落ち込むこともありました。  中学のときに「この先通用しなくなる」と言われたのも、まったく根拠のないイヤミな話ではなかったように思います。

 しかし、プッシュを研究し、ドライブを止めるにしてもフットワークを使い真っ正面に回り込み、こまめにストップの効いた短い球を出す。  こういうことをしっかり身につけていけば、戦型だけでなく、自分の努力次第で勝つことができると思えるようになりました。

 イボ高は、派手で見せる卓球と違い、豪快でもなく、あるいは傍目(素人目)には卓球のイメージを悪くするようなかっこ悪い戦型かもしれません。  でも、地味でも確実に勝てる型として確立しつつあると思います。

 もちろん細かいフットワークも大事ですし、端で見ているほど「楽して勝っている」わけではないのです。  特に連続するラリーを続ける精神力は人一倍必要だと思います。

 イボ高の(戦型の)限界などと簡単に決めてしまわずに、もっともっと努力して、苦しんで、悩んで、強くなっていきたいと思います。  ほかのイボ高を選んだ人も、そうあって欲しいものだと思っています。

最後に

 こうして自分の卓球についてまとめてみましたが、あらためて、自分の卓球が意外と単純なことが分かります。  徹底して卓球を単純化すること、「相手に打たれずに、自分がミスしなければ、負けない」という考えを追求した結果だと思います。

 はじめにも書きましたが、これはあくまでも私の卓球論であって、視野はかなり狭く、偏った考え方をしています。  自分で自分の戦型を研究するというのは恥ずかしくもありますが、自分の目的、弱点をはっきりさせる上で、有用だったと思います。

 最後に、いくら頭の中で考えても、それを裏付けるのは毎日の練習です。  基本的な技術であるイボ高プッシュなどは、ちょっと練習をサボるととたんに全然入らなくなってしまいます。  よく考え、よく練習し、よく悩むこと。  練習の苦しさは、技術のみならず、接戦での精神力(自信)に大きく関わってくると思いいます。  この文を読んで何からの役に立ち、イボ高選手がますます活躍することを願ってやみません。

 この原稿を書いたのは、平成9年の夏でした。  10年ぶりに読んだ自分の文章。  表現の稚拙さに恥ずかしくなったり、「俺って卓球(イボ高)を心底、愛していたんだなぁ。」と改めて感心したり。

 この文章の転載は自由です。  むしろ多くのイボ高選手に読んでもらいたいと思っています。  できたら「○○のサイトに掲載した」とか、メッセージをいただけると嬉しいです。  それではみなさん、イボ高をみんなで高め合いましょう!!

 結びとして、私の大好きな映画「ピン☆ポン」の台詞から  『反応、反射、音速、高速!』  「取れないスマッシュなんてねぇ!!時速200kmの球だって、止めてやるからね。」  (一部、自作です)

 長文におつきあい願いまして、ありがとうございました。

                  平成19年9月 卓男


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